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Endless Battle 〜百花繚乱〜 完全版
10月編

都内某所、誰にも知られていない場所。

「クソ!クソ!クソ・・・」

その一部屋で、新橋が1人悔しがっていた。

池袋に2度挑むも優位にすらなれず、先生であった音無にも徹底的にやられたことも要因であるが、それ以上にそうさせる要因があった。

「上野・・・か・・・許さねえぞ・・・」

かつて一瞬の隙を突かれたとはいえ強力な一撃を食らった上、自分自身を否定してきた上野を強く憎んでいた。

「絶対・・・絶対ブッコロス!!」

この一年間で度重なる強化を受けてきた新橋。

理性を保つことも難しくなっていた。

「・・・アナタがそこまで言うなんて、珍しいわね」

新橋の後ろにある入り口から、女声が部屋に響き渡った。

「・・・お願いだ、もっと強化を・・・」

「それ以上の強化は命に関るわよ?」

「こんな程度の力なんて、強化を受けているうちに入らねえよ・・・いいからそうしろ」

この新橋の言葉を聞き、女性はタメ息をついてからこう答えた。

「そろそろ『百花高校』の学園祭ね」

「・・・だからどうした?」

かつて在籍していた学校の名を聞き、新橋は嫌悪感を露にした。

「ちょっと気になることがあってね。近いうちに行くことになってるの。ついてくる?」

これに対する新橋を答えは決まっていた。



「・・・もう、そういう季節か」

生徒会室前には、デカい掲示板がある。

そこに、二週間後に行われるここの学園祭『百花祭』のポスターが貼りだされていた。

俺が所属するバスケ部も出店をするらしいが、俺は特に関与していない。

何故か神田さんに止められたからだ。

・・・ということは、生徒会は生徒会で何かあるんだろうな。

でも今のところそんな話は聞いていない。

「上野君、どうしたの?」

突然声をかけられた。

声の方を振り向くと、そこには目黒がいた。

「あ、目黒、そっちの部活は何するんだ?」

このポスターを指差して聞いてみた。

「ん〜・・・多分出店だと思う。こっちで忙しくなるから関わってないけど」

「・・・やっぱり何か生徒会でやるんだ」

予想的中だな、これは。

「アレ?何も聞いていないの?」

「あぁ、そうだけど・・・」

「神田さんなら伝えてくれてると思ったんだけどなぁ」

首を傾げながら目黒が疑問を口にした。

「神田さんも最近は色々忙しいみたいだしな」

実際、神田さんと会うのは今日のような定例会議だけだ。

部活にすら顔を出せていない。

ここで会えても、会議のこと以外のことは話さないし。

「多分今日はその話をすると思うから、その時聞いてみて」

「分かった・・・」

この言葉にちょっと引っかかりながらも、俺は目黒と共に生徒会室へと入った。





「さて、定例報告は以上で終了だ。次に・・・」

いつもの定例会議は、問題なく進んでいた。

でも、やっぱり会長だけ姿を現していない。

今日はどこで何をやっているのやら・・・。

「『百花祭』当日のことについて話すが・・・上野と1年は知らないだろうから簡単な説明だけする」

「あ、はい」

突然呼ばれた気がしてしまい、つい返事をしてしまった。

「当日、俺達は見回りと生徒会企画の運営の2つを行う」

「・・・生徒会企画?」

そんな話、全く聞いてないぞ?

「あぁ。生徒会創設時からの伝統的な企画でな。その名も『バトルロワイヤル』!」

大崎さんの声からはやる気のようなものが感じられる。

「・・・具体的には何を?」

「単純よ、最後の1人に残るまで戦い続ける、ただそれだけ」

大塚さんからのいつもながらの淡白な答えが返ってきた。

しかも、ルールも本当に単純以外の何物でもない。

「ちなみに優勝者には授業でも緊急時でも使える超強力武器のチップ、更に所属部活は来年度の予算が倍になる」

品川さんがそのまま続けた形で答えてくれた。

「・・・それって、地味に凄くないですか?」

「あぁ。だから生徒会役員のうち3年は参加できないことになっている」

「え?」

「私達が出ちゃうと、簡単に終わっちゃうからね、そのための配慮♪」

田町さんが明るく解説してくれた。

「なるほど・・・」

「あと、運命系やここで手に入れた武器の使用は基本禁止な」

「え、何で?」

『遠雷』や『両腕部Iフィールド発生器』が使えると使えないとでは、戦いの幅が一気に変化してしまう・・・。

「それがあったら不公平になりかねないから。ただし、生徒会メンバーだけが残ったら使っていいぞ」

「・・・そうなれるよう頑張ります」

とりあえずそれだけ言っておいた。

「よし、じゃあまず当日のシフトから決めるぞ」

神田さんの一声で会議は再開された。



「お疲れ様です」

駅前の喫茶店で、コーヒーを飲みながら待っている牙津に池袋が声を掛けた。

「お疲れ。また遅刻か」

腕時計を見ながら牙津は言った。

「すいません、色々と野暮用が入っちゃいまして」

悪びれる様子もなく、池袋は席に着いた。

「別に咎めるつもりはない。お前の事情は知っているからな」

「それは助かります。それよりも、例の物は?」

「あぁ、これだ」

すぐに牙津は下に置いていたスーツケースを池袋に渡した。

「・・・これだけのために、大きい入れ物を用意したんですね」

「それだけ厳重に扱わなければいけないものだしな。これでも軽い方だ」

「ですね。では、大事に使わせてもらいます」

そう言って頭を下げてから、池袋は席を立った。

その池袋が店を出るのを確認すると、牙津は携帯電話で連絡を取り始めた。

「俺だ・・・あぁ、予定通り頼む。礼は今度するからさ、それじゃ」

それだけ伝えると、牙津は電話を切った。



「・・・そろそろ時間だな」

迎えた『百花祭』当日。

今日の午後2時から例の生徒会企画がある。

・・・直前までシフトが入ったのは運が悪かったな。

おかげで、使う武器のチェックも作戦を練る暇もない。

でも、神田さんに鍛えられたわけだし、ここは頑張んないとな。

・・・いや、どちらかというと部費の欲しさからかもしれないけど。

去年は神田さんの優勝だったらしい。

ウチの部、設備が充実しているとは思っていたけど、まさかこんな事情があったとはな。

・・・そういえば、神田さんが『蒼天の剣』以外を使っているところを見たことがない。

その時もらったという賞品はどうしたんだろ?

「上野くん」

後ろから、目黒に声をかけられた。

「お、どうした?」

「どうしたって、そろそろ行かないと間に合わないよ」

「・・・そうだな、行くか」

俺と目黒は共に向かっていった。



「フフ、楽しそうね」

「ンー、そうなんだなぁ」

「でも俺達でそれ、壊していいんだよな?」

「いいわよ。目的さえ忘れてくれなければ」

「ンー、でも、何でアレがここにあるんだなぁ?」

「知らないわよ。私が聞きたいくらい」

「そういえば、新橋のあんちゃんは?」

「後から来るわよ。来たら始めましょ」

「了解なんだなぁ」



「はい、これ。今回の賞品。大事にしてね」

らむが今回の司会を務める神田にチップを渡した。

「了解です。じゃあ早速、確認を・・・」

そのチップを神田はリストにセットした。

するとチップに入っている武器のデータが浮き出たスクリーン上に表示された。

「・・・こ、これは!?」

その情報を見て、神田は驚きを隠せなかった。

「フフ、スゴイでしょ」

「えぇ・・・でも、よく手に入りましたね、コレ」

「でしょ?何でも、あなたたちの会長が仕入れたらしいわよ」

「・・・池袋が?」

この言葉に神田は反応を示した。

「だから、どうやって手に入れたかは本人に聞いてみて。じゃ、頑張ってね♪」

それだけ言ってらむは行ってしまった。

「・・・何が始まるっていうんだ?」

チップを見ながら神田はそう呟いた。



「・・・スゴイ人数だな」

「そうですね・・・」

会場となる体育館には、全校生徒の3分の2が集まっていた。

そのためもあって、人口密度が尋常じゃない。

最初にクジを引かされ、その結果で決まったエリアに移動させられた。

そこで目黒と分かれてしまい、更に偶然にも五反田とバッタリ会い、今に至っている。

・・・五反田といえば。

「そういえば、渋谷は?」

「たしかCエリアの方かと」

エリアはAからDまでの4つに分けられている。

俺達がいるのはBエリア。

目黒はさっきAエリアに行ったから、見事にばらけた訳か。

「あと、代々木さんもDエリアへ行ってました」

「・・・本当にバラバラだな」

「はい、戦いやすくていいにはいいですが」

確かに、この3人を同時には相手にしたくないな。

皆、あの合宿で随分鍛えられてから、かなりの実力が備わっているし・・・。

『時間になりました。これより生徒会企画、『バトル・ロワイヤル』を開始いたします。まずはルール説明です』

壇上にいつの間にか上がっていた神田さんが、マイク片手に司会を進行し始めた。

『ルールは至って単純。誰か1人が残るまで戦闘するだけ。ダメージ過多でシステムダウンしたらその時点で失格。

尚、武器の変更は2回までしか許されません』

何度聞いても、単純なルールだ。

そもそもEBのシステム上、武器も同時に3個しか登録出来ないんだから、普通に戦えって言われているようなものだ。

『そして、最後まで残った栄えある優勝者にはこの、現役のエンドレスバトラーですら簡単に触ることの出来ない、

レアな武器を贈呈いたします』

そう言いながら高々と手を上げた神田さんの手には、よく見るとチップがあった。

『では、こちらは皆さんによく見えるようここに入れておきます』

そう言って神田さんはチップを壇上に設置された透明な箱の中に入れた。

おそらく、これを見ながら戦えば戦意が高まるだろうっていう狙いだろうな。

『では皆さん、一斉にログインしましょう・・・EB・・・』

「ログイン!!」

体育館中に会場の生徒全員の声が響き渡ると共に、ログインの際の光で会場は一瞬真っ白になった。

『それでは、始めましょう、レディ・・・ゴー!!』

その神田さんの開始の合図と同時に

「借りはかえすぜ!!」

背後から、あの野球部員の中の一人が俺に襲いかかってきていた。

でも、それに俺もすぐに反応できていた。

「甘い!!」

振り下ろしてきた剣を俺は受け止めた。

普段授業で使用している俺愛用の武器、光力翼発生装置『光の翼』で。

背中から発生されているエネルギーの翼で攻撃と防御を一緒に出来る。

『遠雷』に比べて防御出来るのはいい点だが、デカイから融通が利かない点がデメリットだ。

だから普段は『遠雷』を使っているんだが、今は周りに狙われている状況。

しかも、俺が生徒会役員ということもあって一斉に攻撃を仕掛けられている。

こういう時は、翼で自分を包む形で防御しながら引きつけて、ある程度引きつけてから・・・

「今だ!」

一気に翼を広げてそいつらを吹き飛ばす。

『Bエリア、5人ダメージ過多により失格』

神田さんからのアナウンスだ。

多分、今の攻撃で何人かそうなったんだろう。

でも・・・数が減っている気がしない。

この企画、予想以上に疲れるぞ。

「行けえ!!」

そう考えていると、五反田の声が聞こえてきた。

一目見てみると、俺と同じように五反田も周りに狙われているようだった。

手に持っていたのは、大型長距離エネルギー砲『ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャー』。

普段生徒会で使っている『砕かれた世界』によく似た性能の武器だ。

そのためもあってか、五反田はうまく敵を翻弄しながら倒している。

・・・そういえば、目黒に渋谷、代々木はどうしているんだ?



上野がそう心配しているちょうどその頃、目黒も渋谷も同じような状況になっていた。

生徒会役員、その肩書きだけで周りから目の敵にされていたのだ。

だが、今まで何度も実戦を積み、その度に成長してきた2人にはそれはどうということはなかった。

「シュート!」

目黒は高速ブースター付属射撃砲『G-B.R.D』を駆使してヒットアンドウェイを心がけながら戦い、渋谷も

「ハア!」

渋谷は両手にエネルギー攻撃型格闘武器『ビームトンファー』で敵をなぎ倒していった。

その一方で代々木は他の4人に比べて影が薄いということもあって、そのようなことはなかった。

ただ、生徒会時によく使用している『自由の代償』に似た武器がないため、

「ヤアア!」

隅っこに陣取り、迫ってくる相手に向かって多弾装小型ミサイル射出装置『4連装ボップ・ミサイル』をとにかく放っていた。

一発一発の威力は低いものの、数と迫ってくる相手の少なさでどうにか凌ぐことが出来ていた。



「あら、新橋。やっと来たわね」

「・・・・・」

「ん〜、どうしたんだなぁ?」

「今朝、また強化したのよ。もう、意識を保つだけで精一杯なはずよ」

「おいおい、新橋のあんちゃん。アンタ大丈夫かよ?」

「・・・・・」

「何言っても答えられないはずよ。それだけ彼への強化はキツイはずなんだから」

「まったく、無理するんだなぁ〜」

「大丈夫よ、即効性の強化にしてあげたから、明日になればまた元に戻るわ」

「だよな。これ以上は俺でもキツイぜ」

「じゃあ、そろそろいい頃合いみたいだし、行きましょうか」

「了解なんだなぁ」

「待ちくたびれたぜ」



「・・・やっぱりこうなったか」

「だね・・・」

「予想はしていましたけど」

「でも、楽しくなるわね」

「そ、そう?」

企画開始から1時間ぐらい経っただろうか。

結局残ったのは、俺に目黒、五反田に渋谷に代々木の5人だった。

さて、こうなると・・・下手したらこれまで以上の激戦になるわけだ。

『あー、あー、現在残っている5人、いいだろうか?』

神田さんからのアナウンスだ。

『もう残っているのは5人しかいない。ギャラリーもこのままだと盛り上がりに欠けるだろうし、

運命系の使用を許可しよう』

このアナウンスと共に、ギャラリーからは歓声が沸いた。

・・・まぁ、ギャラリーと言ってもここの学生しかいないんだが。

「・・・分かりました、じゃあお言葉に甘えて!」

そう俺が言うと同時に、俺たち5人は同時に

「ウェポンチェンジ!!」

運命系の武器を具現化させた。

このために備えて、多少力を抑えていたんだ。

「全力で行くぞ!」

そう言って俺が構えたその時、どこからともなく爆発音が響き渡った。

突然天井の一部が爆発したからだ。

「え!?」

それに気を取られていると、それにより出来た穴から何かが降りてきた。

その正体は、そこから発生している煙で隠れていてハッキリと分からない。

だが、人影みたいなものは薄っすらと見えた。

それも・・・3つ。

「・・・一体何?」

目黒から疑問の声が上がった。

そして、俺たち5人ともそれに警戒しているのは間違いなかった。

「ふぅ、難なく入れちゃったわね」

「そうなんだぁ」

「まったくだぜ」

その煙の中から声が聞こえてきた。

それと同時に煙も晴れてきて、その人影が何なのかやっと分かった。

1人は、和服がよく似合う美女。

もう1人はその足でよく体重を支えられるのかと疑問に思うほどの肥満体型の男。

最後の1人は・・・やんちゃ盛りに思える子供。

「・・・アンタ達誰だ?」

率直な疑問を俺は飛ばした。

「名乗るほどの者ではありませんわ。ちょっと用事があるだけです」

ニコっと笑みを浮かべながら和服の女性が言った。

だけど・・・

「用事?」

それだけが気になる。

すると肥満体型の男が壇上を向きながら・・・

「ん〜、あれが欲しいんだなぁ」

と、そこにあるこの企画の商品を指差しながら言ってきた。

あれは・・・EB用の武器チップ。

そういえば、現役のエンドレスバトラーでも手に入りにくい武器のデータが入っていると言っていた。

襲撃してまでほしいものなのだろう・・・だが。

「渡せるわけ・・ないじゃないですか」

それが返答だ。

「残念だけど、答えは聞いてないよ」

ガキが生意気に言ってきた。

「そんなこと言われて・・・」

俺が反論しようとしたその時。

「させるわけないでしょ!」

渋谷がいきなりそいつら目掛けて殴りかかっていった。

・・・って、

「おい渋谷待て!」

そんな俺の制止を渋谷は全く聞く様子がなかった。

「ハァッ!!」

その渋谷があのデブに『刹那の夢』で覆った拳が殴りかかろうとしたその時。

「え!?」

そのデブが片手で軽々とそれを受け止めた。

「ん〜、甘いんだなぁ」

すると渋谷の手を両手で掴み、そのまま風車のように1回転させた後投げ飛ばそうとした。

「渋谷さん!」

それを見た五反田が『砕かれた世界』で撃って止めようとした。

だが、

「遅いって」

「え?」

いつの間にか目前まで迫っていたガキがそう言った後、五反田に飛び蹴りを放とうとした。

だが、

「危ない!」

それを代々木が間に入って『自由の代償』で受け止めた。

しかし、

「危ないのはお姉ちゃんの方だよ」

蹴りの力で代々木はそのまま吹き飛ばされた。

そのすぐ後ろにいた五反田も巻き込まれる形になった。

「じゃ、仲良く寝るんだなぁ」

それを見たデブが振り回していた渋谷を代々木が飛ばされた方へと投げ飛ばした。

「渋谷!代々木!五反田!」

俺はその激突を防ごうと向かおうとしたが・・・間に合わない!

「EB、ログイン!!」

突然別の方向からログインの声が聞こえてきた。

すると飛ばされている渋谷を誰かが高速で近づき、受け止めて2人の激突を防いだ。

防いでくれたのは・・・

「大崎さん!?」

「ふぅ、間に合ったぜ」

「後は任せておいて」

と、今度はキャットウォークにいる田町さんの声が聞こえてきた。

周りを見ると、ギャラリーがいない。

おそらく、今いない大塚さんや品川さんが避難を誘導してくれているのだろう。

「その通りだ」

今度は壇上にいた神田さんがいつの間にか具現化させた『蒼天の剣』を構えていた。

「田町、あの美人を頼む!女性に手を出すのは気が引ける!」

「了解♪」

そうやりとりを交わして大崎さんと田町さんは駆け出し、一方の神田さんも

「メガライダー!」

愛用の『メガライダー』を具現化させてそれに乗って突撃した。

「上野くん、あとは任せて私たちは3人を避難させましょ」

目黒が俺にそう提案してきた。

今は・・・そうするしかないみたいだ。

「あぁ、分かった」

とにかく俺は、まず吹き飛ばされた代々木と五反田の下へと向かった。



「オラァー!!」

まず大崎が子供に対して容赦なく『驕れる牙』による斬撃を繰り出した。

「子供相手に大人げないぜ」

呆れながら言葉をこぼすと、その子供は最低限の動きでその斬撃を避けた。

「な!?」

「どうした兄ちゃん、当てられるか?」

「こ、この野郎!!」

子供の挑発に乗った大崎は更に斬撃を繰り出すが、一向に当たる気配がなかった。

更にその近くでも、田町が

「当たれーー!!」

『届かぬ想い』による射撃で美人を狙ったが、尽く避けられた。

それもただ避けられるのではなく華麗に舞いながらのそれを行われていた。

「もう、何で当たんないのよー!!」

これには田町の苛立ちは隠せなかった。

「ストレスは体に悪いわよ、お嬢ちゃん」

美人は余裕を見せつけるかのように田町に言った。

一方で神田は巨漢に対して攻撃を当てていた。

しかし、その攻撃は全くダメージを与えていないのが目に見えていた。

『蒼天の剣』の剣先がその男の腹で見事に止められていたからだ。

「・・・なるほど、ちょっとマズいかな」

神田はそう不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

「今頃気付いても遅いんだなぁ」

すると巨漢は神田が乗っている『メガライダー』を掴み、持ち上げた。

「な!?」

これには流石の神田も驚きを隠せなかった。

「どっか行っちゃえなんだなぁ」

そう言って先ほどの渋谷と同じように投げ飛ばした。

必死に態勢を整えようとする神田だったが、それも空しく壁に激突した。

「神田!!」

大崎と田町がそれに気づき振り向いたところで

「隙だらけだぜ」

「余所見しないの」

子供と美人がそれぞれ大崎と田町にとび蹴りを放った。

それに全く反応出来なかった2人はその直撃に遭ってしまい、そのまま意識を失った。



「・・・うそだろ?」

1年生3人を避難させた後再び体育館に戻ってきた俺達の目の前で、見たこともない光景が広がっていた。

「私もそう思いたい、けど・・・」

どうやら、目黒にもそう思えるようだ。

おそらく、さっき運んだ1年生でもそう思うはずだ。

大崎さんと田町さんが倒れ、神田さんが苦戦している姿なんて・・・。

まだ戦闘している神田さんだって、戦闘服はボロボロになり、乗っている『メガライダー』だって所々破損している。

「・・・神田君、だっけ?いつになったら本気を出すの?」

3人組の内の女性がそう言ってきた。

本気て・・・神田さんが手加減しているとでも言うのか?

「あいにく、学生している間はコイツ一本で戦うって決めているんでね」

この状況下でも、神田さんは笑みを浮かべて答えた。

「そう・・・じゃあ死んじゃえ」

ガキが小さい体に不釣合いなデカいエネルギー系の三つ又槍を具現化させ、神田さんに襲い掛かろうとした。

「危ない!!」

その瞬間、俺も目黒も同時に武器を具現化。

俺は『遠雷』の雷撃を、目黒はジャンクションの光線を放った。

両方とも、ガキには気付かれ、いとも簡単に避けられた。

だが、元々当てる気はいなかった。

あのガキを止めることが出来ればそれで良かったのだから。

「な・・・2人とも!早く逃げろ!」

「そんなこと・・・出来ませんよ!!」

「私も同じです!」

神田さんの指示に、俺も目黒も初めて逆らったかもしれない。

だけど・・・普通に戦って勝てる相手とはとても思えない。

だから、夏合宿のときと同じようにまずは翻弄していくのがいいはずだ。

「目黒!」

「うん・・・ウェポンチェンジ!」

俺の考えが分かったのだろう、すぐに武器を『ピーコック・スマッシャー』に変えた。

「よし・・・行くぞ!」

「うん!」

その掛け声と共に俺は走り出し、目黒も引き金を引いた。

『ピーコック・スマッシャー』から放たれた光線は何度も軌道を変えながら3人組に向かい・・・一発も当たりはしなかった。

だが、これでいい。

元々狙いは動きを止めること。

その間に俺が近づいて、

「食らえ!」

『遠雷』から雷雲を発生させ、3人を包み込んだ。

そこを駆け抜けると同時に、

「今だ!!」

「ええ!!」

俺は雷撃を、目黒も今度は狙って『ピーコック・スマッシャー』の引き金を引こうとした。

その時だった。

「甘いんだなぁ」

「え?」

突然雷雲の中から声がすると共にあのデブが外見から想像出来ない速さで俺の方に向かってきた。

「な!?」

俺は咄嗟に回避し、その突撃を食らうことはなかった。

「ん〜、避けられるとは思ってなかったんだなぁ」

・・・さっきから思うが、なんかコイツの話し方がムカつく。

「でも、アッチの子は気にしなくていいのかなぁ〜」

「え?」

そう言われて、晴れた雷雲の先の方を向いた。

そこには、あの女性に首を掴まれ宙に浮いている目黒の姿が俺の目に映った。

「め、目黒!」

「よそ見していいとは言ってないんだなぁ」

その一言と共に俺の横から物凄い衝撃が飛んできた。

それはあのデブからの体当たりだと容易に予測できた。

そんな予測に関係なく、俺は壁に激突するまでに吹き飛ばされた。

「グハッ!」

あまりの痛みに、思わず苦悶の声をあげてしまった。

「ん〜、このまま終わらせてあげるんだなぁ」

その一言と共に、デブが武器を具現化させた。

それは、腹に備わった3つのデカい砲だった。

腕には反動を抑えるための伸縮可能の腕まで備わっていた。

武器名は・・・ダメだ、今の衝撃で目がかすんで見えない。

「じゃあ、終わりなんだなぁ」

その一言と共に砲口にエネルギーが溜まり始めた。

目黒は・・・神田さんが助けに向かっているのが見える、なら心配ないはずだ。

なら後は俺自身の心配だけ・・・だけど、このままでは本当に終わっちまう。

「行くんだなぁ」

そしてデブがまさに発射しようとしたその時だった。

「やらせないわよ」

キレイなその声と共に誰かがデブに斬りかかった。

「い、痛いんだなぁ」

これにより、デブはよろけながら砲撃を中断した。

斬りかかったのは・・・

「ぬ・・・縫先生・・・」

今学期になって赴任してきた、縫だった。

「上野、大丈夫かい?」

縫先生の登場に驚いていると、突然視界の外から声が聞こえてきた。

・・・見なくても誰か分かった。

「だ・・・大丈夫です、蝶子先生」

「そう、ならいいわ。あとは任せて」

そう言ってから蝶子先生はいつもの刀を具現化させた。

「え?」

「今のあなたじゃ、あいつらには勝てないわ。だから私たちが相手をする」

「そ、そんなこと・・・」

「代わりに」

俺の反論を打ち消すかのように言葉を被せられた。

「・・・アイツをどうにかして頂戴」

蝶子先生は天井を指差して言った。

その指の先には、先ほど空いた穴からこっちを見る・・・新橋の姿があった。

「・・・分かりました、お願いします」

俺がそう言って構えると、新橋が俺に向かって降りてきた。



「ん〜、縫ちゃんに蝶子ちゃん、久しぶりなんだなぁ」

「アンタも相変わらずね、恵比寿」

上野を見送った蝶子が巨漢の男に向かって言った。

「ボクはラッキーなんだなぁ、カワイイ君たちを相手に出来るなんて」

満面の笑みを浮かべながら言った。

「・・・あいにく、私は全く逆よ」

「私も」

ため息を吐きながら、2人は答えた。

「ん〜、何でなんだなぁ、ボクみたいなイケメンを相手に出来るのになぁ」

ただでさえ短い髪の毛をかき上げる仕草をしながら恵比寿は聞いた。

「簡単よ」

「私たちは」

「デブはキライなの」

最後はほぼ同じタイミングで2人は返答した。

それほどキライなのだということが、鈍い恵比寿にも感じ取れた。

「ん〜、今のは傷ついたんだなぁ。だから力づくで今晩の相手してあげるんだなぁ」

そう言い放ってから、恵比寿は先ほどの砲を構え直した。

三重同時高威力光線放射兵器『トリプル・メガ・ソニック砲』。

まともに食らえば、ただでは済まされないのは目に見えていた。

しかし、

「残念だけど、それは叶わないわよ」

蝶子は刀を構え、避ける素振りを見せなかった。

「なら、このまま発射しちゃうんだなぁ」

その恵比寿の発言どおり、砲口にはエネルギーが次第に溜まっていった。

「撃っても意味ないわよ」

反面、蝶子は全く慌てる様子は見られない。

「なら、本当にそうなのか試しちゃうんだな」

この恵比寿の一言と同時に、3つの砲から光線が蝶子に向かって放たれた。

放たれた凄まじい3本の光線は交わることにより更に大きい一本の光線となり、蝶子に全て直撃と思われた。

しかしその直前、恵比寿に信じられない光景が目に映った。

蝶子の刀が光線を受け止めたのだ。

正確には、刀が光線のエネルギーを吸収していた。

「こ、これは予想外なんだなぁ」

恵比寿も口調は変わらぬものの、表情には驚きが浮かんでいた。

そして蝶子は

「まだよ!」

と言い放ってからそのまま直進。

光線の威力は吸収する刀によってほぼ無力化されていた。

直進し続け、恵比寿の前まで来た蝶子先生は刀を振り上げ、光線を元から切り捨てた。

これにより光線が途絶えた次の瞬間。

「くらいな」

この蝶子先生の一言とほぼ同じタイミングで、刀身から眩い光が放たれた。

「ま、眩しいんだなぁ」

これで怯んだ恵比寿の隙を、蝶子が見逃すわけがなかった。

「ハッ!」

掛け声と共に振られた刀により、恵比寿の腹部にも一文字の傷が浮かんだ。

蝶子先生が普段から愛用し、絶大な威力と性能を持つ刀。

その名も、最高級EB用日本刀『山紫水明』。

EB用にエネルギー吸収機能、閃光撹乱機能を付加した、最高ランクの武器である。

その刀身から放たれる斬撃を受けたものは、ただでは済まない。

「す、凄く痛いんだなぁ」

「これで終わるわけないでしょ」

「え?」

恵比寿の後ろでは、既に縫が持っていたエネルギー系の剣を上段で構えていた。

持っていたのは、一刀両断用大型エネルギー剣『シュベルトゲベール』。

その名の通り、目標を両断させることを重点に置いて作られた武器である。

威力においては『山紫水明』かそれ以上とも言われている。

「ま、待つんだなぁ」

「待つわけないでしょ」

恵比寿の願いを切り捨て、縫先生はそのまま『シュベルトゲベール』を振り下ろした。

間合いからして、恵比寿が縦に分断される距離であった。

しかし、恵比寿は咄嗟に後ろに下がり、それを免れた。

代わりに、腹部に縦の傷が入り、蝶子が作った傷と合わせて十文字になった。

「ひ、ヒドイんだなぁ」

「その言葉、そっくり返してあげるわよ」

蝶子が再び『山紫水明』を構えながら言った。

「そういうこと、よくもウチの生徒を傷つけてくれたわね」

蝶子はもちろん、赴任してきたばかりの縫でも、生徒を傷つけることは許せないことであった。



「ク・・・」

「どうしたの?何かしたかったんでしょ?」

目黒を助けようと『メガライダー』で突進した神田だったが、それを女性に片手1つで簡単にとめられてしまっていた。

この状況に神田は

「・・・あぁ、その通りだ!!」

反論すると同時にグリップに付けられていたボタンを押した。

それは、『メガライダー』の前面に付けられていた砲からエネルギー弾を放つための引き金だった。

「な!?」

直撃しその衝撃に女性は吹き飛ばされると当時に目黒を手放した。

「ゴホ、ゴホ・・・」

首の締め付けから解放された目黒は膝を突いて咳き込んだ。

「大丈夫か?」

神田は『メガライダー』から降りて目黒に駆け寄った。

「は、はい、大丈夫です」

目黒がそう答え立ち上がった瞬間、神田が何かに衝突され吹き飛ばされてしまった。

「神田さん!」

「やってくれるじゃないの・・・」

女性が神田の方を向きながら言った。

「・・・ようやく、武器を出してくれたな」

神田も立ち上がりながらそう言い返した。

「何ですって?」

神田の発言に女性は疑問を浮かべた。

「武器を出されずに負けたとなったら、流石にカッコ悪いからな。これで少しは体面は保てるはずだ」

「・・・なめてるわね。いいわ、全力で相手」

その女性の言葉を遮るかのように、だれかが2人女性それぞれの側面に飛び蹴りを見舞い、更に数メートル吹き飛ばした。

そして女性に飛び蹴りを放ち吹き飛ばした2人がから目黒の前に着地した。

その2人の名を、目黒は思わず口にした。

「らむ先生・・・日晴先生・・・」

「ゴメンね、待たせちゃって」

「後は任せておけ・・・神田、大崎と田町を避難させてくれ」

「え?でも・・・」

いきなりの日晴からの指示に神田は戸惑いを隠せなかった。

「保健室で迦樓美ちゃんがスタンバってくれてるから、早く2人を治療してもらって。君なら一番速いから」

「なるほど、分かりました。後はお願いします」

その一言と同時に神田は再び『メガライダー』に跨り、発進させてから大崎と田町を回収してその場を離脱した。

「・・・目黒」

それを見送った日晴が目黒に声をかけた。

「は、ハイ」

「お前はアイツに加勢してやれ」

「え・・・?」

日晴の向く方向、そこには新橋相手に苦戦を強いられている上野の姿であった。

「わ、分かりました!」

すると目黒は『ピーコック・スマッシャー』を構え、駆け出した。

「フフ、久しぶりね、らむちゃんにひばちゃん」

目黒が離れた後、女性が笑みを浮かべながら2人に声を掛けた。

「うん、久しぶり、鶯谷(うぐいすだに)ちゃん・・・だけど、そうも言ってられないみたいね」

「だな、一気に片づけさせてもらう」

この日晴先生の一言と共に、2人は一斉に武器を具現化させようとしたその時。

らむ先生の前に音無が、日晴の前に田中が突然どこからともなく現れ、それを止めた。

「え?」

「どういうことだ?」

この2人の行動に、らむも日晴も疑問を感じざるを得なかった。

「2人とも、少し落ち着け」

「お前らがここで戦ったら、被害がどれだけ広がると思っている?」

「う・・・」

「・・・確かにそうだな」

2人ともこの説得に素直に応じた。

「あとは任せておけ、2人とも援軍が来ないかで監視でもしててくれ」

音無がそういうとらむが顔を膨れさせ、

「もう・・・バーカバーカバーカ!!」

と、大人びた外見からは想像できない子供じみた言葉を残してその場を去った。

「・・・ついでにアイツも監視しておくな」

「あぁ、すまない」

日晴もそう言い残してらむの後を追った。

「さて・・・、俺たちはもうログイン済みだ、いつでも相手してやるぞ」

田中が鶯谷に向かって言った。

「そうね・・・でも、麗ちゃんは別みたいね」

「何?」

音無が疑問符をあげたその時。

襲撃してきた最後の1人、少年が音無に突撃しながら胸倉を掴んだ。

「久しぶりだな、麗ちゃんよぉ!!」

「・・・お前も久々だな、田端」

勢いで空中に吹き飛ばされながら2人は会話した。

そう言葉を発してから音無は掴まれた手を無理矢理放し、田端を蹴り上げた。

宙に高々と上げられた田端を確認し、音無はいつもの『フェザーファンネル』を何本か具現化させ、

「爆ぜろ」

この一言と共に飛ばした。

狙いに寸分の狂いもないその射撃は、田端に全弾命中し、爆発した。

普通の相手であったら、これで十分倒せていた。

しかし、相手はEBとして外見から違う田端。

そう簡単にはやられなかった。

「相変わらず射撃が上手いなぁ、麗ちゃん!だけど、その分接近戦は・・・」

空中で体勢を整え、そう言葉を発しながら田端は武器を具現化させた。

それは、子供の田端には身長を軽く上回るほどの長いエネルギー系の槍。

遊撃用高速特化槍『デファイアント』。

それを構えてから

「苦手だろ!!」

音無に向かって急降下した。

対する音無先生は、これに対して行動を起こした。

田端の攻撃に対して、音無は一歩も動かなかった。

動かしたのは右腕だけ。

それで、『デファイアント』の柄をガッチリと掴んで受け止めていた。

「ナ!?」

この行動に、田端は驚きを見せた。

あの速さでこの音無が取った行動は、失敗したときのことを考えるとリスクが大きすぎるからだ。

「・・・武器で戦いの得意不得意を決めるとは、まだまだ子供だな」

「え?」

音無が急に話し始めた。

「お前みたいに得意分野を更に伸ばすために武器を選ぶのが普通だが、逆だってあるんだよ」

「逆?」

「そう・・・『伸ばす必要がないから別の方面を伸ばす』っていうことがな!」

そう言い終ってから、音無先生は田端に向かって指を指した。

次の瞬間、どこからともなく現れた『フェザーファンネル』が田端に向かって次々と当たり、爆発した。

「グハッ!」

その爆発で高々と宙に打ち上げられた田端を確認した音無は、

「坂東先生、今だ!」

キャットウォークの方を向き、そこで準備していた坂東に伝えた。

「了解、こっちもようやく承認が取れたところだ・・・来い!」

坂東の言葉が終わると共に、その足元で何かが光って登場した。

それは、可愛らしい犬の姿であった。

もしこれを上野や大塚、渋谷に五反田が見ていたら、5月のあの任務を思い出したことであろう。

「よし、行け!」

その号令ともとれる言葉を聞いた犬は姿を変え、田端に向かって真っ直ぐ向かっていった。

それは以前、まりんが使用していたのと同じ『十二支』の武器であった。

その姿は、坂東にワイヤーのようなもので繋がれた4つの砲であった。

十二支系推進システム兼用遠隔操作ビーム砲『戌:ガンバレル』。

そしてその砲は一斉に田端への射撃を開始。

放たれた光線は全て田端へ命中。

普通だったら倒れてもおかしくないダメージであるが、それでも田端は空中で体勢を整えて着地した。

「な・・・なめやがって」

これらの攻撃に、田端の怒りは頂点に達しつつあった。

「いい機会だ」

「納得いくまで相手になるぜ」

音無と降りてきた坂東がそう田端に伝えた。



一方で、田中先生と鶯谷の戦闘も行われていた。

「ハッ!」

田中先生は右肩に備えた大きな盾の先端を前にむけた。

すると盾の先端から光線が放たれた。

攻防一体型光線砲『トロイダル状防楯内臓メガ粒子砲』。

その光線は目標に見事命中。

しかし、それで田中先生が安心することはなかった。

今攻撃したのは、鶯谷ではなかったからだ。

攻撃したのは、鶯谷と共に戦う3体の人型のロボット達。

遠隔操作型人型兵器『Bit・ラスヴェート』。

これにより、田中先生は実質1対4の戦いを強いられていた。

「フフフ、降参するなら今の内よ?」

「だれが!!」

逆上した田中先生が『トロイダル状防楯内臓メガ粒子砲』を構えたその時だった。

その後ろに回りこんだ『Bit・ラスヴェート』が持っていた銃を構えたのだ。

だが、田中先生は振り向こうともしなかった。

なぜならその更に後ろで

「やああ!」

翡翠が構え、武器である2つのワイヤーに繋がれた刃を射出していた。

その刃は2体に突き刺さり、そして

「タァッ!」

そのまま振り回し、投げ飛ばした。

その武器の名は、ワイヤー射出型貫通刃『禍ノ白矛』。

「遅いぞ、翡翠」

「助けにきただけ、ありがたいと思いなさい」

とても外見からは想像出来ない口調に、慣れているとはいえ田中はどうにも気疲れを感じていた。

「ふふ、あなたも相変わらずね、翡翠ちゃん」

そんなやり取りを見ていた鶯谷が笑みを浮かべながら話しかけた。

「鶯谷ちゃん、久しぶり。あんまり女の子と戦いたくないけど・・・手加減は出来ないですよ」

翡翠は射出した『禍ノ白矛』を巻き戻し、再び構えた。

「そうね。私も同じ考えだわ」

そう言いながら、鶯谷は3体の『Bit・ラスヴェート』を自分の元に一旦引き寄せた。

「行くぞ」

「はい!」

そして3人の戦いは再開された。



「だ、大丈夫か?」

「う、うん・・・ありがとう」

吹き飛ばされ転倒した目黒を俺は手を伸ばして立ち上がるのを手伝った。

アイツ・・・新橋の奴、やっぱり強い。

会長だからこそ翻弄することは出来たけど、今の俺たちの実力じゃそれが出来るわけがない。

それどころか、2人がかりでも対等にすら渡り合えない。

・・・だけど、アイツ妙だ。

「・・・・・」

さっきから一言も発してない。

それどころか、目も虚ろに見えるし、息も荒い。

「一体・・・お前ら何が目的なんだ!?」

とにかく、今は相手の情報が少なすぎる。

ここは息を整える意味でも、少しでもそれを絞り出させよう。

「・・・・エ・・・ノ・・・」

「え?」

やっと何か言葉を発した。

だけど、何て言ったんだ?

「ウエノーーーーーーーーーーーー!!」

新橋の叫びがまるで地響きのようにこっちにまで伝わった。

しかも、俺の名前で・・・。

「俺が・・・俺が何したって言うんだ!?」

正直、俺には心当たりは何もない。



「ウエノーーーーーー!!!!!」

また叫んだ後、武器も持たずに俺に突っ込んできた。

エネルギー系の攻撃でない以上、『ビームコーティング』でも『両腕部Iフィールド発生器』でも止められない。

なら、こいつだ!

「目黒、散れ!」

「う、うん!」

このやり取りの直後、俺は『遠雷』で雷雲を発生させた。

それと同時に俺と目黒は散開しそこから逃れ、新橋だけがそこに突っ込んだ。

だけど、すぐ突破されるのは目に見えている。

なら・・・

「目黒、練習してきたアレ、やるぞ!!」

「え?う、うん、分かった!」

コイツは前と同様にフィールドを纏っている。

俺の『遠雷』はもちろん、目黒に至っては主力武器はほぼ無力されてしまう。

でも、そのためにこの攻撃方法を思いついたんだ。

「ウェポンチェンジ!」

武器を『両腕部Iフィールド発生器』に変え、準備は出来た。

そして、新橋が雷雲の中から飛び出してきた。

「今だ!!」

「うん!」

俺の掛け声と共に、目黒は跳躍。

そして回転をしながら、あの時の羅印さんと同じように

「発射!!」

『ピーコック・スマッシャー』の引き金を引いた。

放たれた9本の光線は、軌道こそ読めないものの、そのまま新橋の方へと向かった。

新橋もそれに気付き振り向くも、フィールドに守られているのは分かっているのだろう。

微動だにせず、光線が打ち消されるのを黙ってみていた。

俺はこの隙を待っていた。

「フィールド展開!!」

まず俺は新橋のフィールドの中に飛び込んでから両腕からフィールドを展開させた。

相手のフィールドの内部だったら、こっちのフィールドに全く影響はない。

俺のこの右腕のフィールドを収束させて・・・今だ!

「必殺!シャイニング・フィンガーーーーー!!!」

俺の会心の一撃を放った。

それは奴が振り返ってきたことにより見えた腹部に直撃・・・だが。

(た、耐えてる!?)

俺の右腕から放たれる衝撃に、吹き飛ばされることなく耐えていたのだ。

以前だったらこれで吹き飛ばされたはずなのに・・・こいつも強くなっているてことなのか!?

「ガ・・ア・・ァ・・」

それでも、奴が傷みに耐えているのは分かった。

なら、締めだ・・・頼むぞ、目黒!

「『ジャンクション』、『JSAモード』起動・・・シューーート!!」

新橋を挟む形で俺の反対側で構えていた目黒が武器をジャンクションに変えて光線を放った。

俺はそれが新橋に当たる直前にその場から横に飛び離脱。

フィールドは俺の与えた衝撃によって無効化されていたため、光線は新橋を飲み込み、そのまま壁際まで吹き飛ばした。

「はぁ・・・はぁ・・・やったか?」

「た・・・多分・・・」

俺の『シャイニング・フィンガー』と目黒の『ジャンクション』の攻撃を連続で受けたんだ、ダメージがないなんてことはないはずだ。

そう信じていた俺と目黒は、視界に入ってきた光景を見て目を疑った。

「・・・う、嘘だろ?」

立ち込める煙の中で立ち上がる、新橋の影がそこにあったのだから。

すると、新橋が何か武器を具現化したと思われる光が見えた。

それは銃のような形で・・・おそらく、夏合宿の時に使っていたアレだろう。

と、その光線の元であろうと思われる光が見えた。

狙いは間違いなくこっちだ、回避は・・・間に合わない!

「『ビームコーティング』!フィールド展開!!」

俺の行動と共に光線はこちらに迫ってきた。

まず光線は『ビームコーティング』と接触・・・だが、すぐ破られてしまった。

次に俺の左腕から展開したフィールドと接触・・・光線は逸れていくが、明らかに処理能力が追い付いていない。

その上、元々の威力が大きく、いくら光線を逸らしてもその勢いはこちらを押し続けている。

このままでは防ぎきれない・・・。

と懸念していた途端、目の前でフィールドが効力を失った。

処理能力が追い付かなくなり、フィールドが作動限界を迎えたみたいだ。

それによって今まで前に進めなかった光線がすぐ近くまで迫ってきた。

今度こそ光線が直撃する、そう思った時に

「アル!!」

目黒が『アルミューレ・リュミエール』を具現化させ、それを俺の前に持ってきた。

エネルギーの盾が光線を遮ったが、その勢いに押されているのは明白だった。

これも、いつまで持つのか・・・。

「!!キャァ!!」

俺の心配が現実になり、衝撃で俺も目黒も後ろの壇上まで吹き飛ばされてしまった。

「ク・・・マズいな・・・」

痛みに耐えながらも俺も目黒も立ち上がった。

でも、もう術が残されていない・・・万事休すか?

(・・・ん?)

何か俺の手元に転がっている。

これは・・・あの賞品の武器チップ?

と俺が考えている隙に、それを目黒が手に取った。

そしてそれを取り出して、リストの中に・・・って。

「お、おい目黒!?」

「もう・・・これしかない!」

次の瞬間、目黒の目の前に眩い光が発生した。

「・・・え?」

こんな大掛かりな企画の賞品だ。

きっと凄い武器なんだろう、ずっとそう思っていた。

だけど、その武器は・・・

「・・・ネズミ?」

目黒の手の平に収まる程の小さなネズミだった。

しかも、どちらかというとネズミというよりかは・・・ハムスターに近いと思う。

あ、毛繕いを始めた。



「・・・フフ、カワイイ」

・・・おい、目黒、和んでる場合じゃないぞ。

と思っているうちに、新橋がこっちに銃口を向けてきた。

その先は・・・俺じゃなくて目黒だって?

「目黒、危ない!」

俺が目黒に注意を促すと、それに反応したのか先ほどまでと同じ真剣な顔になった。

その瞬間、目黒の手の平に乗っていたネズミ・・・もといハムスターが急に光りだした。

そしてそれが光そのものとなり、急に拡散した。

・・・この光景、見たことがある。

あの、屋上での異星人との戦いだ。

ということは・・・あれも?

俺がそう考えを巡らせているうちに、その光が目黒の背中に集まり、形を現した。

それは、無機質な機械の翼であった。

その目黒を見ても、新橋は動揺1つ見せていない。

このままじゃ、本当に目黒がやられてしまう。

すると目黒が『天使』状態に入り、更に背中から、神秘的に輝く翼を出した。

「・・・行くよ」

その一言と同時に目黒は跳躍してその場から離れ、新橋の射線から外れた。

・・・速い。

何度か『天使』状態になった目黒と手合わせしたが、あそこまでの速さはなかった。

やはり、翼が2つある効果なのか?

しかし、新橋も狙いを目黒にするのを諦めていない。

すぐさま飛んだ目黒に銃口を向けようとしたその時だった。

「行って!」

あの無機質な翼の先端が射出され、新橋に向かっていった。

更にその翼の先端が新橋に対してそれぞれ光線を放った。

その狙いは正確だ。

外すことなく、全て新橋に命中している。

しかも、やつのフィールドも役に立っていない。

光線はそれを貫いて新橋にダメージを与えている。

「ガァァァァァ!」

この攻撃で、新橋は射撃を行えずにいる。

今まで圧倒されていた新橋にここまで優位に目黒が進めている武器。

それは・・・あの時まりんさんが使っていたのと同じ、十二支の武器。

その名も十二支系推進翼兼用遠隔操作砲『子:機動兵装ウィング・スーパードラグーン』。

これは・・・チャンスだ。

目黒が新橋を翻弄してくれているおかげで、今ならその隙を突いてダメージを与えられる。

あの光線もフィールドは破けても、それで威力が相殺されている。

決定打にならない以上、俺がそれを打つしかない。

・・・だけど、さっきと同じじゃダメだ。

あれぐらいだと、奴に耐えられてしまう。

そうなると、残された手段は・・・

「・・・『両腕部Tフィールド発生器』、『JSAモード』起動!!」

これで威力は単純に三倍だ。

先月、1年前の話を聞いて知った。

『シャイニング・フィンガー』を放った後でも『JSAモード』で強制的にフィールドを発生させられるということを。

でも、これでただ攻撃するだけではダメだ。

・・・やったことはないが、試す価値はある。

両手を組み、フィールドを合わせた。

同じ装置からのフィールドだ、相殺されずに同調され更にフィールドを増大させた。

これをぶつければ・・・どうにかなるはずだ。

勝負は一瞬、これを逃したらもう勝機はないだろう・・・。

そう考え、まず『覚醒』状態になった。

これでそれを逃すことはないはずだ。

あとはコイツをぶち当てるだけだ・・・。

(上野くん!)

目黒からの『プライベートメッセージ』だ。

それを聞き目黒を見ると、全ての射出した砲を自分の元に呼び寄せ、浮遊状態に入らせていた。

・・・なるほど、意図は分かった。

(OK!)

それに返事をし、俺は構えた。

「行って!!」

目黒の掛け声と共に浮遊状態の砲から一斉に光線が放たれ、俺は跳躍した。

光線は広く放たれたため、新橋は避けることは出来なかった。

全てが当たったわけではないが、数本がフィールドを破って直撃し、動きを止めた。

あとは・・・俺がやるべき仕事だ!

一気に天井近くまで跳び、張り巡らされている鉄骨を蹴って更に勢いをつけた。

目指すのはもちろん・・・新橋の方だ!

「フィールド収束!必殺!ダブルシャイニング・フィンガーーーー!!」

その両手を思い切り新橋に当てると同時に、今まで放ったことのない衝撃を与えた。

「ガァァァァァァ!!」

『JSAモード』を発動させた『シャイニング・フィンガー』をあの状態で受けたんだ。

つまりは単純に考えて6倍は確実にある威力、それをまともに受けて大丈夫なわけがない。

そこから放たれた衝撃で新橋は吹き飛び、体育館の壁際まで吹き飛んだ。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

今ので俺自身の力は勿論、『両腕部Iフィールド発生器』も完全に限界だ。

この戦いじゃもう使うことは出来ない。

奴は・・・新橋はどうなった?

「・・・ク、クソォ・・・ウ・・・エノォ・・・」

途切れ途切れな声を出しながら、新橋がそこから立ち上がった。

まだ立ち上がれるなんて・・・。

だけど、見るからに戦える状態じゃない。

俺はそれに応えようと構えた・・・その時。

「・・・え?」

腕に違和感を感じ見てみると、『両腕部Iフィールド発生器』が音もなく崩れ落ちていた。

どうやら・・・あの威力に耐え切れなかったみたいだ。

だけど、俺はもう戦えなくても目黒にはまだそれが出来る。

勝敗は・・・見えていた。

「もう、お前の負けだ」

「ミ・・・認メナイゾ・・・!!」

そう言って新橋が構えようとしたその時だった。

「待ちなさい、新橋」

さっきの女性が新橋の後ろから肩を押さえ、止めた。

「マ・・・待テルカぁ!!」

「十二支を取られた時点で、私たちの任務は失敗よ。ここは下がるわ」

「そういうこと」

「仕方ないんだなぁ」

いつの間にか、あのガキとデブも駆け寄っていた。

「それじゃあ皆さん、ごきげんよう」

「ま・・・待」

俺が言葉を出し切る前に4人は入ってきた天井の穴に向かって跳躍、そのまま姿を消した。

とにかく、どうにかこの場を凌ぐことが出来た。

・・・あ・・・アレ?

気が緩んだら、急に力が・・・抜けてきた・・・。

「う、上野くん!?」

遠くから目黒の声が聞こえてきたけど、もう・・・何も考えられない・・・。

今は・・・寝よう。



後日、先生たちと話し合いが行われ、あの企画の優勝者は結局、最後まで意識を保っていた目黒で決まった。

そのため、あの十二支の武器もそのまま目黒に譲渡された。

だけど、あの武器には色々と規約があるらしく、実戦はもちろん練習でさえも承認がいるらしい。

その承認は・・・今は会長からもらわなくちゃいけないとか。

・・・緊急時に連絡が取れればいいんだけどな。





だけど、俺たちは気付くことが出来なかった。

この戦いこそが、更なる戦いの始まりになるなんて・・・。